自分とは何か Netflixで「アニマ」を見た ※ネタバレあり

Netflix大好き、もぐらコナーです。今回はスペインのネトフリオリジナル作品「アニマ」を鑑賞したので、そのことについて話そうと思います。

 

まず映像がすごく綺麗です。メイン登場人物のアブラハムのどことなく中性的な雰囲気もあり、全体としてとてもムードある作品です。

 

一応ホラー作品になるのかな?でも全然怖くないからホラー苦手な人も安心。ただ、結構難解な作品だと思います。何度か見返したけど未だによくわからないシーンがいくつか残ってます。肝心のラストシーンも「この解釈で合ってるのかな?」と、イマイチ自信を持てないのが正直なところ。

 

ところで、「アニマ」の意味は何でしょうか。昔衝動買いして23回使ったっきりのスペイン語辞書で調べてみたところ、「anima」で「魂」という意味になるそうです。日本語タイトルは「アニマ」ですが原題は「ANIMAS」と複数形になっていますね。

 

 

☆主要登場人物☆

 

・アレックス   高校を卒業したばかりの女子。アブラハムとは昔からの親友。アブラハムと親密な様子のアンチのことが気になっている。最近身の回りに怪奇現象が頻発している。自傷癖あり。

 

アブラハム   アレックスと同級生の男子。暴力的な父親と心を病んだ母親と共に暮らす。ホラー映画が好き。

 

・アンチ   アブラハムとイチャイチャしている中国系の女子。アブラハムと同じくホラー好き。

 

・カーラ=ベルヘル   アブラハムが通っているサイコセラピスト。

 

 

 

 

☆以下ネタバレ☆

 

 

辛い環境で過ごす少年アブラハムの心に誕生したもう一人の人格アレックスを取り巻く話でしたね。だからanimaS。なるほど。ただ、あの最後のシーンはどう解釈すればいいんでしょうか。アレックス人格が「私は消える」と宣言した後、建物屋上から飛び降りましたね。そこで終わってればアブラハム人格に統合されてめでたしめでたしですが、なんで巻き戻るの?

 

結局アブラハムの肉体を支配したのはアレックス人格だったんじゃないでしょうか。

 

まずこの映画、画面の色がすごく印象的で、赤・緑・黄色の三色が場面ごとに象徴的に使われていますよね。赤は父親の虐待など、アブラハムの体に降りかかる苦痛を象徴してるんだとして残りの緑と黄色ですよね。

 

ホラー要素の強い場面では緑が使われることが多く、逆に黄色は安心感ある場面で使われることが多いです。でもアブラハムがアンチと楽しそうに会話しているシーンでは緑が使われています。楽しい会話なのに。逆にアレックス人格に支配されたアブラハムの肉体がセラピストを殺そうとする場面は黄色なんですよ。

 

つまりこういうことじゃないでしょうか。アレックス人格が優位に立っている、もしくはアブラハム人格と共存している時には黄色、アブラハム人格が自立を志向してアレックス人格が危機にある時は緑。

 

これが正しいとします。そこで最後のアレックス飛び降りシーンですけど、アレックス人格は危機どころか消滅しようとしていますよね。でも画面は黄色いんですよ。つまりアレックス人格は危機に瀕していない。

 

 

ところで、映画の最初の方にアブラハムとアレックスが公園で将来について話ししてる場面ありますよね。あそこで、「20年後、父親の店で怒鳴り散らすアブラハムの姿が目に浮かぶ」と言ったアレックスに対してアブラハムは「冗談だろ。死んだ方がマシだ」と返すんですね。これ英語字幕にするとアブラハムは「I’d rather jump off a building.」と言っているんです。「ビルから飛び降りた方がマシだ」

 

オリジナル言語はスペイン語ですが、そちらにも「tejado」という言葉があって、これが「屋根」という意味なんですよ。

 

 

劇中にアブラハムによっても語られてましたけど、アレックスは無意識に抑圧されたアブラハムの欲望のままに行動しているんですよね。アブラハムはアレックスが飛び降りる直前に父親殺害の犯人が母親であることを知りました。辛い現実ですよね。受け入れたくない。辛い。これからの長い人生を生きていくのは辛すぎる。「屋根から飛び降りた方がマシだ」

 

アブラハムの無意識に押し込まれたこの欲望が「アレックス人格が消滅することによって人格統合が為された」という空想を作り上げつつ実際にはアブラハム人格(欲望の主体)を消滅させることにより辛い人生から逃げ出すことに成功した。

 

つまり最後に目覚めた肉体に宿る人格はアレックスなんですよ。乗っ取られてしまった。というかアブラハムが肉体をアレックスに明け渡した。いや押し付けた?

 

劇中で何度かでてくる「サイコ」も最後にはノーマンはノーマの人格に乗っ取られてしまいますよね。そういう話なんじゃないかなと思ったんです。